易経 六十四卦の一覧と意味

『易経』 (周易) は、 陰と陽の線 6 本を積み重ねた 「卦 (か)」 で物事の状態と移り変わりを表す、 古代中国の占いと思想の書です。 線の組み合わせは 2 の 6 乗で 64 通りあり、 これを六十四卦と呼びます。 このページでは 64 の卦を伝統的な順番 (序卦伝の順) に並べ、 それぞれの読み・成り立ち・意味をまとめています。

各卦の 「卦辞の要約」 は、 原文 (漢文) を現代の日本語で短くまとめたもので、 原文の訳そのものではありません。 正確な本文は 『易経』 の訳注書 (岩波文庫 高田眞治・後藤基巳訳 など) で確かめてください。

八卦 — 六十四卦のもとになる 8 つの卦

線 3 本の組み合わせ 8 通りを八卦 (はっか) と呼びます。 六十四卦は、 八卦を上下に 2 つ重ねたものです。 下の卦を下卦 (内卦)、 上の卦を上卦 (外卦) と呼び、 卦名の多くは 「上卦の自然 + 下卦の自然 + 卦の名」 の順に読みます (例: 水雷屯 = 上が水、 下が雷の 「屯」)。 上下が同じ八卦のときは 「乾為天」 のように 「為」 を使います。

記号八卦読み自然性質
☰乾けん天健 (つよし)
☱兌だ沢説 (よろこぶ)
☲離り火麗 (つく)
☳震しん雷動 (うごく)
☴巽そん風入 (はいる)
☵坎かん水陥 (おちる)
☶艮ごん山止 (とどまる)
☷坤こん地順 (したがう)

上経 — 第1卦 乾為天 〜 第30卦 離為火

『易経』 の本文は上下 2 巻に分かれ、 前半の 30 卦を上経と呼びます。 天と地 (乾・坤) に始まり、 水と火 (坎・離) で終わります。

第1卦乾為天(けんいてん)

卦辞の要約
元亨利貞。創造と自強の時。
現代の読み方
天の創造力を借りて、自らの意志で道を切り拓け。慢心は禁物。

第2卦坤為地(こんいち)

卦辞の要約
牝馬の貞に利あり。順に従う時。
現代の読み方
受け身で大地のように全てを受け止め、焦らず育てよ。

第3卦水雷屯(すいらいちゅん)

卦辞の要約
始まりの苦しみ。動けば困難に。
現代の読み方
新しい物事の産みの苦しみ。焦らず助言を求めよ。

第4卦山水蒙(さんすいもう)

卦辞の要約
蒙 (くらき) を啓く教えの時。
現代の読み方
謙虚に学べ。同じことを何度も問い直すのは、教える側への礼を欠く。

第5卦水天需(すいてんじゅ)

卦辞の要約
待つことに利あり。信を持って待て。
現代の読み方
焦って動かず、時を待て。飲食を楽しみながら待つのが吉。

第6卦天水訟(てんすいしょう)

卦辞の要約
争いの卦。訴えは中道を守れ。
現代の読み方
争いを起こせば凶。妥協点を探し、大物の仲裁を仰げ。

第7卦地水師(ちすいし)

卦辞の要約
軍を率いる時。丈人 (経験ある長老) なら吉。
現代の読み方
リーダーシップが試される時。規律を守り、集団を率いよ。

第8卦水地比(すいちひ)

卦辞の要約
親しむ卦。仲間と比べ助く。
現代の読み方
信頼できる仲間と集え。ためらわず行動すれば吉。

第9卦風天小畜(ふうてんしょうちく)

卦辞の要約
小さく蓄える時。雨はまだ。
現代の読み方
今は大きく動けず、小さな蓄積と雌伏の時。焦らず。

第10卦天沢履(てんたくり)

卦辞の要約
虎の尾を履む慎重の時。
現代の読み方
危険の中を慎重に歩け。注意深く振る舞えば害なし。

第11卦地天泰(ちてんたい)

卦辞の要約
天地が通じ物事が安泰。
現代の読み方
万事順調な大吉の時。今のうちに守りを固めよ。

第12卦天地否(てんちひ)

卦辞の要約
天地が通じず塞がる時。
現代の読み方
停滞の時。動かず守り、小人を遠ざけ、時を待て。

第13卦天火同人(てんかどうじん)

卦辞の要約
野で人と同じくする。大事業に利。
現代の読み方
公明正大に仲間と協力すれば大事を成せる。

第14卦火天大有(かてんたいゆう)

卦辞の要約
大いに有つ時。元亨。
現代の読み方
豊かさの頂点。慢心せず、徳を持って富を用いよ。

第15卦地山謙(ちざんけん)

卦辞の要約
謙 (へりくだる)。亨る。君子は終わりあり。
現代の読み方
高い立場でも謙虚に。謙遜は全ての吉を招く。

第16卦雷地豫(らいちよ)

卦辞の要約
予 (よろこぶ) の卦。諸侯を建てるに利。
現代の読み方
喜びと安らぎの時。ただし油断は凶。備えを怠るな。

第17卦沢雷随(たくらいずい)

卦辞の要約
随 (したがう)。元亨、利貞。
現代の読み方
状況に柔軟に従え。自分の意を曲げても大義に従えば吉。

第18卦山風蠱(さんぷうこ)

卦辞の要約
蠱 (くずれたもの) を立て直す時。
現代の読み方
腐敗や怠惰を改革する時。始める前と後によく考え、手順を踏め。

第19卦地沢臨(ちたくりん)

卦辞の要約
臨 (のぞむ)。元亨、利貞。八月にして凶あり。
現代の読み方
上に立つ者として民に臨む。公正と親和が鍵。

第20卦風地観(ふうちかん)

卦辞の要約
観 (みる) の卦。手を清めて祭りに臨むような、誠ある姿勢の時。
現代の読み方
全体をよく観察し、軽率に動かず学ぶ時。

第21卦火雷噬嗑(からいぜいごう)

卦辞の要約
噬嗑 (かみあわす)。獄を用いるに利。
現代の読み方
障害を噛み砕いて進む時。厳正に対処すれば吉。

第22卦山火賁(さんかひ)

卦辞の要約
賁 (かざる) の卦。小に利あり。
現代の読み方
外見と形式を整える時。大事は中身で、表面ではない。

第23卦山地剥(さんちはく)

卦辞の要約
剥 (はがれる) の卦。往くに利あらず。
現代の読み方
崩壊の時。動かず守り、君子は退いて時を待て。

第24卦地雷復(ちらいふく)

卦辞の要約
復 (かえる) の卦。出入病なし。
現代の読み方
陽が戻る復活の始まり。焦らず着実に歩み始めよ。

第25卦天雷无妄(てんらいむぼう)

卦辞の要約
无妄 (ことさらなし)。元亨、利貞。
現代の読み方
純粋な心で自然に任せよ。邪心や妄動は凶。

第26卦山天大畜(さんてんたいちく)

卦辞の要約
大いに畜 (たくわえる)。利貞。
現代の読み方
大きく力を蓄える時。賢人を養い、大事業に備えよ。

第27卦山雷頤(さんらいい)

卦辞の要約
頤 (やしなう) の卦。貞にして吉。
現代の読み方
養いと言葉に気をつけよ。食べるもの・言うことを正せ。

第28卦沢風大過(たくふうたいか)

卦辞の要約
大いに過ぐ。棟撓む。
現代の読み方
過剰の時。棟木が撓む危機。思い切った改革が必要。

第29卦坎為水(かんいすい)

卦辞の要約
重なる険難の卦。信あれば通る。
現代の読み方
二重の困難。誠実さと不屈の心で道を切り拓け。

第30卦離為火(りいか)

卦辞の要約
離 (つく) の卦。利貞亨。
現代の読み方
光明の時。正に付き、牝牛を養えば吉となる。

下経 — 第31卦 沢山咸 〜 第64卦 火水未済

後半の 34 卦が下経です。 人と人との感応 (咸) に始まり、 「まだ完成していない」 を意味する未済で終わります。 完成 (既済) の次に未完成を置き、 変化に終わりがないことを示しています。

第31卦沢山咸(たくざんかん)

卦辞の要約
咸 (感ずる)。取女に吉。
現代の読み方
感応し合う時。男女 / 上下の心が通う。婚姻に吉。

第32卦雷風恒(らいふうこう)

卦辞の要約
恒 (つねに)。亨、咎なし。
現代の読み方
持続と変わらぬ道の時。長く続ければ吉。

第33卦天山遯(てんざんとん)

卦辞の要約
遯 (にげる)。亨、小に利貞。
現代の読み方
退き引く時。小事のみ利。君子は隠遁し力を蓄えよ。

第34卦雷天大壮(らいてんたいそう)

卦辞の要約
大いに壮ん。利貞。
現代の読み方
勢い盛んな時。ただし力任せは禁物、礼を守れ。

第35卦火地晋(かちしん)

卦辞の要約
晋 (すすむ)。康侯に馬を賜う。
現代の読み方
明るく進む時。上の信頼を得て、昇進 / 拡大の吉。

第36卦地火明夷(ちかめいい)

卦辞の要約
明夷 (めいい)。艱貞に利。
現代の読み方
明が傷つく暗黒の時。才能を隠し、内に守れ。

第37卦風火家人(ふうかかじん)

卦辞の要約
家人 (一家)。利女貞。
現代の読み方
家庭を整える時。各人が役を果たせば全体が整う。

第38卦火沢睽(かたくけい)

卦辞の要約
睽 (そむく)。小事に吉。
現代の読み方
意見が食い違う時。小事は通じ、大事は慎重に。

第39卦水山蹇(すいざんけん)

卦辞の要約
蹇 (なやむ)。西南に利、東北に利あらず。
現代の読み方
困難の時。大人に相談し、進むべき方向を慎重に選べ。

第40卦雷水解(らいすいかい)

卦辞の要約
解 (とける)。西南に利。
現代の読み方
緊張が解ける時。古い重荷を早く解決し、前に進め。

第41卦山沢損(さんたくそん)

卦辞の要約
損 (へらす)。孚 (まこと) あれば元吉。
現代の読み方
下から上に捧げる時。倹約と損失を受け入れて信を得よ。

第42卦風雷益(ふうらいえき)

卦辞の要約
益 (ふやす)。利大川を渉る。
現代の読み方
上から下へ益する時。公益に動き、大事業に利あり。

第43卦沢天夬(たくてんかい)

卦辞の要約
夬 (きめる)。王庭に揚ぐ。
現代の読み方
決断の時。公明に判断し、武力ではなく誠で説け。

第44卦天風姤(てんふうこう)

卦辞の要約
姤 (あう)。女壮なる。娶に用うる勿れ。
現代の読み方
意外な出会いの時。小人が入る兆し、慎重に。

第45卦沢地萃(たくちすい)

卦辞の要約
萃 (あつまる)。王廟に假す。
現代の読み方
人が集まる時。リーダーの元に集結し、大事業に着手。

第46卦地風升(ちふうしょう)

卦辞の要約
升 (のぼる)。元亨、用て大人に見る。
現代の読み方
順調に昇る時。焦らず、一歩ずつ大物に会え。

第47卦沢水困(たくすいこん)

卦辞の要約
困 (くるしむ)。亨。貞大人吉。
現代の読み方
苦境の時。言葉ではなく行動で信を得、静かに耐えよ。

第48卦水風井(すいふうせい)

卦辞の要約
井 (いど)。邑を改めて井を改めず。
現代の読み方
井戸は変わらぬもの。自分の本質を改めず、人に益を与えよ。

第49卦沢火革(たくかかく)

卦辞の要約
革 (あらたむ)。已日にして信あり。
現代の読み方
革命 / 大改革の時。機が熟したら大胆に古いものを変えよ。

第50卦火風鼎(かふうてい)

卦辞の要約
鼎 (かなえ)。元吉、亨。
現代の読み方
新しい体制を確立する時。三本足の鼎のようにバランスを。

第51卦震為雷(しんいらい)

卦辞の要約
震 (うごく)。雷至りて笑言啞啞。
現代の読み方
驚きと震動の時。動揺せず自らの道を守り続けよ。

第52卦艮為山(ごんいざん)

卦辞の要約
艮 (とどまる)。其の背に艮す。
現代の読み方
止まる時。動かず、心を静め、雑念を払え。

第53卦風山漸(ふうざんぜん)

卦辞の要約
漸 (しだいに)。女帰ぐに吉。
現代の読み方
ゆっくりと着実に進む時。階段を一段ずつ登れ。

第54卦雷沢帰妹(らいたくきまい)

卦辞の要約
帰妹 (とつぐ)。征けば凶。
現代の読み方
節度を守らぬ結合は凶。行き過ぎを慎め。

第55卦雷火豊(らいかほう)

卦辞の要約
豊 (おおい)。王之に假 (いたる)。
現代の読み方
豊かさの頂点の時。太陽が中天にあれば必ず傾くことを知れ。

第56卦火山旅(かざんりょ)

卦辞の要約
旅 (りょ)。小亨、貞吉。
現代の読み方
旅の卦。慎重に振る舞い、自分の立場をわきまえよ。

第57卦巽為風(そんいふう)

卦辞の要約
巽 (したがう)。小しく亨る。往く所あるに利し。
現代の読み方
柔順に従う時。風のように入り込み、大物に会え。

第58卦兌為沢(だいたく)

卦辞の要約
兌 (よろこぶ)。亨利貞。
現代の読み方
喜びと説得の時。民を喜ばせて動かせば吉。

第59卦風水渙(ふうすいかん)

卦辞の要約
渙 (ちる)。亨、王廟に假す。
現代の読み方
散らばる時。民心を集結し、大事業に取り組め。

第60卦水沢節(すいたくせつ)

卦辞の要約
節 (せつ)。亨。苦節は貞ならず。
現代の読み方
節度の時。ただし度を越した節制は害となる。

第61卦風沢中孚(ふうたくちゅうふ)

卦辞の要約
中孚 (中まこと)。豚魚に及ぶ。
現代の読み方
誠が内に満ちる時。誠意が通じない相手にも必ず通じる。

第62卦雷山小過(らいざんしょうか)

卦辞の要約
小過 (少し過ぎる)。小事は可、大事は不可。
現代の読み方
小事でやや控え目に過ぎる程度が吉。大事に手を出すな。

第63卦水火既済(すいかきせい)

卦辞の要約
既済 (すでになる)。亨小、利貞。
現代の読み方
事が既に成った時。完成後の油断が凶を招く、慎重に。

第64卦火水未済(かすいびせい)

卦辞の要約
未済 (いまだならず)。亨。
現代の読み方
未完成の卦。終わりに近づいているが、慎重に最後を締めよ。

卦の読み方

卦の線は下から上へ数えます。 いちばん下が初爻 (しょこう)、 いちばん上が上爻 (じょうこう) です。 一本線が陽、 真ん中が切れた線が陰を表します。

易で占うと、 まず今の状態を表す本卦が出ます。 変化しつつある線 (変爻) があるときは、 その線の陰陽を入れ替えた之卦 (しか) が 「これから向かう先」 を表します。 卦は吉凶の判定ではなく、 「今の状況でどう振る舞うとよいか」 を考える手がかりとして読みます。

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