▍AI Dev Lab
PyPad

PyPad ができるまで — Pyodide で Python REPL を作る

Pyodide (CPython を WebAssembly にコンパイルしたランタイム) を CDN side-load して、 入力したコードがブラウザの外に出ない Python REPL を構築した設計記録。

·decision改善·stage公開中

PyPad は、 Python をインストール不要・サインアップ不要でブラウザだけで実行できる無料の REPL です。 入力したコードと標準出力 / traceback は サーバーに送られず、 ブラウザ内だけで完結 します。 Pyodide (CPython を WebAssembly にコンパイルしたランタイム) を CDN から side-load して使う構成。 メディア処理ラボ 12 本に続く 13本目、 新カテゴリ 「プログラミング環境」 を追加しました。

#なぜこの形にしたか

オンライン Python (Replit / Programiz / Google Colab) は便利ですが、 すべて コードをサーバー側で実行する 設計です。 機密性のあるスクリプトの動作確認、 個人情報を扱う処理、 「会社の PC に Python を入れたくない / 入れられない」 ユースケースでは、 サーバーに送らない選択肢があった方がいい。

Pyodide が v0.26 で CPython 3.12 互換 + 主要 PyData パッケージ (NumPy / pandas / scikit-learn) を揃え、 ブラウザ実用に届きました。 初回 ~10MB の DL があるものの、 IndexedDB キャッシュで 2回目以降は即起動。 Python の素地が成立しています。

#見た目の方針

Python yellow + Jupyter orange on deep navy。

  • 背景: 深い navy #0a0d1c
  • メイン: Python 公式 yellow #ffd43b
  • 副次: Jupyter orange #f37726

Python のブランドカラーを認識可能な形で使いつつ、 既存 12 サービス (mint / amber / violet / cobalt / lime / gold / rose / indigo / emerald / vermilion / uranium / phosphor) と完全別軸の warm-on-cold で識別性確保。

#実装の見どころ

#1. CDN side-load + Turbopack バイパス

@xenova/transformers / pyodide のように WASM ランタイムを含む重いパッケージは、 Next.js Turbopack の chunk loader を経由すると Cannot convert undefined or null to object で死ぬ事故を 2回踏みました (word-warp / voice-scribe)。 PyPad は最初から CDN side-load:

ts
const PYODIDE_BASE = "https://cdn.jsdelivr.net/pyodide/v0.26.4/full/"
const s = document.createElement("script")
s.src = `${PYODIDE_BASE}pyodide.js`
document.head.appendChild(s)
// after script loads → window.loadPyodide is callable

const py = await window.loadPyodide({ indexURL: PYODIDE_BASE })

これでバンドラを介さず、 CDN から直接 Pyodide を読み込めます。

#2. stdout / stderr の capture

Pyodide は setStdout / setStderr に batched コールバックを渡せます。 各 print 行が文字列としてバッファされ、 実行終了後に UI へ:

ts
let stdout = ""
let stderr = ""
py.setStdout({ batched: (s) => { stdout += s; if (!s.endsWith("\n")) stdout += "\n" } })
py.setStderr({ batched: (s) => { stderr += s; if (!s.endsWith("\n")) stderr += "\n" } })

stdout と stderr を別 pre 要素に出すことで、 traceback (stderr) と通常出力 (stdout) が混ざらない。

#3. import 自動検出

Pyodide は loadPackagesFromImports(code) で「コード中の import 文を見て、 必要なパッケージ (NumPy 等) を自動 DL」 してくれます。 失敗しても本実行で改めて ImportError が出るので、 best-effort で呼び warn だけ:

ts
try {
 await py.loadPackagesFromImports(code)
} catch (e) {
 console.warn("[py-pad] loadPackagesFromImports warning", e)
}
const result = await py.runPythonAsync(code)

#4. 最後の式の評価

REPL 体験を出すために、 runPythonAsync の戻り値 (= 最後の式の評価結果) を捕まえて UI に「last expression」 ラベルで表示します。 print("x") だけのコードは戻り値 None なので stdout 側に出る。 2 + 2 のような式は last expression 側で 4 と見える。

#5. 検索で使われそうな言葉

  • 主: 「Python ブラウザ実行」「オンライン Python」「Python REPL」
  • 補: 「Pyodide」「WebAssembly」「インストール不要」「サインアップ不要」「無料」

title / description / Hero h1 / FAQ最初の Q / service.tags の 5箇所に主用語を散布。 LLMO 用に「インストール不要 / アップロード不要 / 完全オフライン (初回後)」 を description へ。

#6. 出力が壊れていないかの検査

result panel に data-stdout / data-stderr / data-result / data-failed を出して、 e2e で:

  • print("hi") → stdout に hi
  • 1 + 1 → result に 2
  • 1/0 → failed=1, stderr に ZeroDivisionError

を assert。 silent fail の余地を構造的に潰します。

#苦労したところ

  • Pyodide の TS 型: 公式パッケージは TS 型を提供していますが、 CDN side-load 経由だと global window.loadPyodide のシグネチャを自分で書く必要があります。 最小限の手書き Pyodide 型で凌ぎました。
  • Tab キーの編集挙動: textarea のデフォルト挙動 (Tab でフォーカス移動) を上書きして 4スペース挿入に。 簡易 IDE 体験。
  • Ctrl+Enter 実行: 一般的な REPL ショートカット。 onKeyDown でハンドル。

#このサービスから言える事

ラボの 13 本:

  • voice-scribe / clip-cast / bg-snap / text-pluck / pdf-anvil / pixel-lift / pic-flip / mind-cell / beam-drop / word-warp / exif-peel / ascii-bake / py-pad

カテゴリ:

  • 認識 / 変換 / 生成 / 転送 / インスペクション / クリエイティブ / プログラミング環境 ← 新

「」 の射程が、 メディア処理から AI チャット、 P2P 通信、 メタデータ検査、 ASCII アート、 そして本物のプログラミング言語ランタイムまで伸びました。 「重い処理だけがブラウザの中で動くわけではない」 を 13本目で改めて示した形です。

[ ./next_action ]

読んだら、 PyPad を実際に動かす。

この開発ログは PyPad をどう作ったかの記録です。 読み終わったらそのままサービス本体へ戻って、 実物で価値を確かめてください。

[ ./related_logs ]

関連する開発ログ

all logs →
ShadowTwin

立体パズルの別解を作る:同じ影と最少の積み木

ShadowTwinの開発記録。3方向の図から別々の最少配置を2つ探す仕組み、5問の独立全探索、スマホの横並び比較、保存・再編集と入力検査を解説します。実照明の計算や能力診断ではありません。

read log →
SlitCard

スリットアニメーションを作る:4コマの合成と透明原稿の設計

SlitCardの開発記録。4コマの帯を交互に合成し、すき間と黒帯で別のコマを見せる仕組みを解説。同縮尺の台紙・透明シートSVG、50mm確認線、手動プレビュー・初期非表示、再編集と実出力検査を整理します。

read log →
WindowLight

日当たりシミュレーションを作る:窓の光を床へ投影する幾何モデル

WindowLightの開発記録。太陽位置近似から窓の4隅を床へ投影し、凸多角形を部屋で切り取る設計を解説。国立天文台の16時刻との限定照合、大気差・低高度・実際の採光との違い、SVGと設定の再編集を整理します。

read log →
GridLights

電源構成の比較を作る:割合と実量を100個の電球で読み解く

電源構成比較GridLightsの開発記録。12か国の年次発電データを最大剰余法で100個の電球に変換し、割合とTWhを比較する設計を解説。欠損を0補完しない7分類、予想と実値、出典付きSVGと実データ検証を整理します。

read log →
SoundLoom

音のお絵かきを作る:実WAVから絵を測り直す設計

音のお絵かきの開発記録。描画を正弦波のPCMとWAVへ変換し、保存音声の周波数をGoertzel法で測って比較する仕組みを解説。音量・測定窓・量子化の限界と、編集・離脱時の古い結果を抑止する検証を整理します。

read log →
MazeLoom

宝探し迷路を作る:寄り道まで含めた最短ルートの探索

宝探し迷路の開発記録。通路を木として生成し、現在地と3つの宝の取得状態を組み合わせて最短ルートを探す仕組みを解説。問題コードの版固定、画面と解答付きPDFの一致、手数と印刷の検証を整理します。

read log →